頭と一緒に評判も下げる人たち

標題の件。ザラッと思いつく所でも東横イン・藤田社長、JR西日本・垣内社長、そして件の耐震偽装事件に纏わる諸々のエラい人たち。企業トップではなくともおネェちゃんを横に乗っけたか上に乗っけたかして飲酒運転した中村獅童、近い所では平成生まれに乗っかってクビになった人とクビにした人。

人間、生きてりゃあ色んな事が起きてしまうもので、事の良かれ悪しかれを抜きにして平伏しなければならんこともあるんでしょう。
しかし、最近この『謝罪っぷり』で男を上げた、という例を寡聞にして聞かない。

先程列記した面々は悪評を招いた方々を、むしろ積極的に挙げてみたので少々露骨に映るんでしょうが、強いて挙げるならヒーターで物議を醸したM社が謝罪しても『さすがM下』と言わしめたか。しかしアレは企業戦略的な部分が多く『そこまでやるか』という印象を強くさせる為の動き方だったので『男を上げる』という表現にはちょっと遠いのかも知れない。

以前に深夜番組か何かで観たのだけども、新進企業のトップに模擬謝罪会見をやってもらい、その光景を専門家が評価するっていう番組。出てくる社長が軒並み態度が悪く、評価を下げてたのが印象的ではあったものの『本番ではこうはならないだろう』というのも手伝ってか、その時には特にどうという風にも思わなかったんですが、先日降って湧いたように起こったP社給湯器の事件で、あぁ、そんなもんなんだなと感じた。
最もよろしくない時期に最悪の対応をしちゃったんですよなぁ。業界内では『P社は第二のM下になれるのか?』という見方をしていたものの、第一回記者会見の模様を眺めて『あぁ、やっちゃったね』という。
折しも耐震偽装問題で世間の目が建築業界に対して目一杯の逆風、さらに死者の実数からすればP社の一件のほうがダントツに多い。そういう観点からして、先のM下の一例を引くまでもなく『やりすぎ』なまでの情報公開と事後処理が望まれていたんだ、と思った。
しかし現実にはそうならず、『今』と『今後』を天秤に掛けた結果、『今』を選択したような会見になってしまった事は否めない。恐らく今後は執拗な、マスコミによる暴露記事第○弾!的な扱いを受けてすべて後手後手に回ってしまうのだろう。叩いて埃の出ない企業なんてないのだ。

建築関連業界の人間としてP社のこれまで、というものを俯瞰するにここ4〓5年でビルトイン向けのコンロシェアを大きくした印象を持つ。ビルトインコンロについては、P社のほかに大手R社、H社の3社でほぼ寡占状態。市場シェアという部分ではIHヒーターの普及率が邪魔して正確には見えてこないのだけども、ガスコンロについては市場規模の1割〜2割程度でR社4割、H社3割、あとはその他メーカー・海外製品で1割弱、という感じなんだと思う。それでも、4〜5年で伸ばしたシェアはすべて価格競争に打ち克って得たものであって決してヒット商品が出て儲けながら伸ばしたシェアではない。その辺り、ようやく軌道に乗り始めたところで…と判断を誤ってしまったのが先の会見で出てしまったのかも知れない。あるいは慢心があったか。

もともとは湯沸器でメシを食っていた会社であり、そう言う意味では会社の根幹で地雷が火を噴いたって事で復活は九分九厘難しいんでしょう。部品供給を受けて、自社ブランドとしてコンロ作ってたメーカーもあったハズで、P社が倒れたらアワ食って安い供給元を探すんだろうか。知らんけど。

謝って済む問題では無いでしょ、とはいうものの謝ってなお事態の好転が図れないなら謝り甲斐がないというもの。上手な謝り方なんて、そんなもんケースバイケースでマニュアル化できるモンでもないんだろうけど、ただ前例を見るにつけ、全国共通して謝り方がヘタな民族になっちゃったんであろうというのは解る。
謝って済む問題なんてこの世には存在しなくて、日本古来の風習として色濃く残る『土下座』にしたって、精一杯の誠意を見せる事で相手が心を打たれてはじめて効果があるというものなんだし。その効果を豊富な資金力に任せて強奪するM下のやり方は到底ほめられたもんじゃぁないんだが、それだって世の中が『さすが』と思った事は間違いない。ならばそれは正解なんだろう。

謝罪にしろ賠償にしろ、それをする事で贖罪されるというものではない。あくまでも代替物の提示によって相手に譲歩を求める、1つの手段である。言い換えれば記者会見での謝罪、というのはブラウン管というツールを用いた不特定多数に向けてのコミュニケーションであると思う。企業のTOPに上り詰められる人物がコミュニケーションを上手く取れない、と言う事は、企業が向かうベクトルというのはそういう向きになっているという意味なんだろう。
なんだかツマラナイ世の中になったモンである。


今宵は此処まで。