姉歯関連にちょっと口出ししてみるよ

大手ゼネコン施工ホテルも営業自粛

はい、出たこのパターンっ!!*1
という事で次々明るみに出る姉歯設計・ヒューザー関連事件。
業界内では『次が出て当たり前』という雰囲気なんですが、世間様ではそうでない様子。
「また出たの?」
「大手でも?」
とか。そりゃあ出ますよ、やってんだから。
本来、マンション建てて分譲して、その一戸当たりの単価が3,000万切るあたりがどう考えても異常事態なワケでしてね。土地タダで仕入れたのかよ?的な価格設定なんであります。
建築業界には「躯体関連業者の価格は叩くな」とい不文律がありまして。あんまり買い叩き過ぎて手を抜かれても、検査でワルサが容易に発見出来ないのが駆体・コンクリートの不備なんですな。
中が見えないんですから、見つけようがない。コンコン、入ってますか?って便所じゃ無いんだから。
なので資料の提出を徹底させたりするんですが、その資料すら偽造されたら一巻の終わりなんですよ。
しかしそういった手法の善し悪しはあるものの、その価格帯で販売した住戸は飛ぶように売れる。つーことは市場の需要はその価格帯までに落とさなければ、喚起できないという事。
だったら何とかしてその販売価格に持っていけるまでに利益・経費を逆算して原価を予算計上する。
しかしその比較対象が鉄筋抜いてるワケですから、まっとうな商売している側からしたらたまったもんじゃない。まぁ早めに発覚して良かったね、というのが本音。
しかし一方で、安かろう悪かろうに慣れてしまって尚かつ「もっと安くなんないのっ!」というユーザー側に責任が一切無い、と言い切れはしないと思う。ちょっとだけ。

業界内部ではこの一連の事件、「痛し痒し」という意見が大半でしてね。
というのも原価圧縮の為に、どの会社でも多少の危ない橋は渡っている。それを覆い隠すかのように造られた言葉が「経済設計」。
要は価格圧縮の為に、通常とは違う収め方・作り方をしてますよー、という後ろ暗い行為を何となく日の当たる場所に持っていった時に出来た言葉なんですな。
そういう同じ穴の狢が捕まったワケですから、やはり戦々恐々というのがぶっちゃけた部分。
しかし、だからといって「やっぱり建築業界は旧態依然とした隠蔽体質でもって、そういう不備な建築物を量産してるのか!?」と決めつけるのはちょっと待って頂きたい。
価格がしんどいのは、どこの会社でも同じ。で、仕事の請負金額が下がって要求されるレウ゛ェルが上がる、ってのはこの業界に限った話じゃない。本来は「請けた金額の中で、如何にいい仕事をするか」がプロの仕事なんであって。鉄筋抜いて安くするのは誰だって出来る。極端な話、ワシでも出来る。ただそういう「異常な手段」に慣れてしまうと、鉄筋抜くのも鼻毛抜くのと大して変わりなくなってしまうのだろう、とは思う。シャブと一緒ですわな。
本来ワシら建築業者が客から言われて苦慮しながらも乗り越えるのは「品質を落とさず価格は落とす」事。だから見えない所でかなり悪さをしても、絶対に入居者である「素人さん」に気づかれてはならない。プロの手口とはそういうモンです。なのでやった本人はアホ、やらせた奴もバカ、見抜けなかった奴はマヌケ、不正を断ったら仕事が来なくなる業界の風潮はウンコ以下。

実際、見えない&機能面で問題ないという大前提の元に、如何にコストを落とすかってのはプロとしての腕の見せ所なハズなんですが、どうなんだろう。
例えば壁にベタっと接する面に塗料は塗らない。塗っても塗って無くても、品質にはいささかの変わりもないし、箱を固定から外して動かさなければ入居者が気づくことはありえない。まぁあんまり褒められた手法では無いんだろうけど。

そういったコスト削減、ってのは一律な手法があるワケでは無くて、単純に現場で納品の順番が変わるだけで大幅にコストダウンになるケースがままあるんですよな。いわゆる現場の知恵。
つまりは傷交換などのメンテナンス部分の費用がグッと減る、などなど。但し手慣れた順序ではないので、ミスも発生したりする恐れのある諸刃の剣。素人にはおすすめできない
それでもその中で活路を見いだすのが、【仕事】なんでは無いかと。つーことで仕事してないアイツらは、とっとと縛るなり吊すなりして業界から出してくれ。

以下余談。

身辺に件のマンションを購入した人が居るんですが、先日ちょっと話を聞けた。やっぱり、区の対応で随分違う様子。某区の担当者は、入居者説明会の時に笑いながら話をしてたそうで。そりゃ気絶するぐらい怒る人も出るわなぁ。
ネットリテラシーとか何とか、web界隈ではかますびしいんんだけどもそういう批判を受けがちなnetユーザーの中の人は、あぁいうオッサン連中なのかも知れん、とふと思った。
あと、企業努力が足りん!というお声をあちこちで聞くんだけども、努力した結果として定年間際の最後の現場で、現場事務所に寝泊まりする事を余儀なくされ、挙げ句に冬の日に疲労と肺炎で急逝された現場監督を身近に知っているワシとしては、総論で
「ちょっとは頑張れよオマエらっ!」
と言われても「お前も頑張れよ」という所感しか無い。頑張ってどうなる時期はとうに過ぎてる業界なんですよなぁ。としみじみ。
反響あれば続編書くかも。



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http://d.hatena.ne.jp/Lloyd/20051207

*1:日村口調。『落下女』参照