近鉄が一番輝いた日
先日の近鉄10.19について某・本武師匠より賛同の意を得ましたので、ご存じ無い方の為に詳細をば(笑)。
背景としては、シーズン中盤までに首位・西武に最大8ゲームまで離された万年Bクラスの近鉄バファローズ*1が、中日から移籍した新戦力・ブライアントの加入により後半狂ったように猛追撃。首位攻防戦にも勝ち越し、西武は近鉄より先に全日程終了。
そして運命の10月19日、ロッテオリオンズ*2との最終戦のダブルヘッダーに連勝すれば悲願の優勝。ロッテはこの時点ですでに最下位が決定しているものの、本拠地での胴上げは屈辱と最後の力を振り絞って近鉄の優勝を阻もうとする。
初戦は近鉄・小野*3vs小川*4で試合開始。愛甲*5の先制弾と小川の好投によりロッテペースで試合が進む中、鈴木貴久*6のソロ、村上*7のタイムリー等で同点に追いつく。この村上がベース上で繰り返すガッツポーズにまず一回目の鳥肌(笑)。
そして同点のまま9回表に突入。ロッテは抑えの守護神・牛島*8を投入。ヒットで出塁の淡口*9に替えた代走・佐藤*10が、鈴木貴久のタイムリーで一挙本塁を陥れる!…も、狭い川崎球場、間一髪アウト。本塁上で、呆然と立ちつくす佐藤の姿に高校野球ですら失いつつある『一勝への執念』を見た。鈴木はこの間に二塁を陥れる。
後の無い近鉄が送り込んだのは捕手の梨田*11。凡退すれば万事休す、しかも一塁が空いている状況で歩かせられるケースもある中、執念でセンター返しのタイムリー!!!! ファンはココで二度目の鳥肌を立てる。
その後、二日前に一試合を完投した阿波野*12がスクランブル登板。満塁のピンチを招くが、最後は外角の直球で見事三振を奪い、この試合を制した。
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第2試合は先発園川*13と高柳*14の先発で試合開始。
序盤は前試合に同じくロッテ・マドロック*15の先制弾で一点のビハインドを背負っての展開。7回まで園川にほぼ完全に押さえ込まれる。しかしこの日7番に入っていた吹石*16、9番真喜志*17の『年間1本打つか打たないか』の本塁打がアベックで飛び出し一気に逆転。流れは一気に近鉄へ…と思われた矢先の8回裏、第1試合に続いて登板した阿波野の外角低めのスクリューを高沢*18が掬い上げてスタンドインでまさかの同点。このあと両チーム無得点のまま延長10回へ。
ただし。
間にこのダブルヘッダーの中で最悪なプレーをオリオンズ・有藤監督が行う事になるが割愛する。ハッキリ言ってこの試合を語る上で、最も糞なエピソードである。
9回表の印象的なシーンを拾う。
無死から大石大二郎*19が出塁。二番は南海から前年に移籍した新井*20の当たりは三塁ライン際への強い打球!!
しかしこれをサードの水上*21がドンぴしゃのタイミングで横っ飛び捕球、一塁へ目の覚めるような矢の送球で間一髪アウト。このプレーは敵味方共々の心に、当時実況していたABCテレビの阿部憲幸アナウンサーの『ジス・イズ・プロ野球〜〜〜〜!!!!!』の名実況*22と共に深く焼き付く事になる。
10回表、時間的に最後の攻撃が濃厚なこの回、先頭のオグリビー*23がエラーで出塁して望みを繋ぐも、最後は羽田*24の併殺で万事休す。10回裏、3アウトだけの消化試合を守りきるべくリリーフの木下*25らと共に守備に散る。この時、大石との間に交わされた
『羽田さん、守備につきましょう』 『だって、もう俺たちのシーズンは終わったじゃないか』 『がんばれば、あと三分くらいで終わりますよ…』
の言葉に涙した方も多いと思う。
負けなかった。
しかし優勝はならなかった。
翌年、ブライアントを軸にした猛牛打線で西武を破り、リーグ優勝を勝ち取るが2004年現在、12球団唯一日本一の経験の無い球団である。
*1:当時。現:大阪近鉄バファローズ 将来:未定…
*2:現:千葉ロッテマリーンズ
*3:後に西武へ移籍後引退
*4:この年の奪三振王 2005.1.8追加:後に殺人の罪で逮捕…
*5:引退後失踪
*6:北海道出身、現コーチ 2004.5.17追加:本日午前1時17分、急性気管支炎のため大阪府八尾市の病院で永眠。享年40歳。
*7:後に西武へ移籍、妹は中村紀洋の嫁。歌唱力プロ級&ルックスはモデル級の逸材
*9:巨人より移籍、引退後再び巨人へ。現二軍監督
*11:近鉄の元・正捕手。冗談では無く一時期、有田・梨田で正捕手を争う。現近鉄監督
*13:荘・小川と並んでロッテの先発3本柱。球は速くないが、年に1,2試合位2安打完封とかやっちゃう
*15:アダ名は狂犬マッド・ドック。狂犬っぷりを見せるのは本塁上でのクロスプレーのみ。因みに応援歌はサザエさん…
*16:娘はあのアイドル・吹石一恵。玄人好みの堅守が好きでした
*17:同じく守備の人。阪急戦で山田久志のウエストした球を横っ飛びでスクイズしたのが印象的なプレー
*18:後に広島へ移籍
*19:小さな大打者。デーゲームで日よけの意味で目の下にコルクを張るのは、この人が先駆けだったと思う。後に『第二朗』に改名。
*20:現オリックス打撃コーチ。元祖イチローばりのシュアな打撃、インパクトの瞬間に頬をふくらませるバッティングフォームが大好きだった
*21:後に広島へ移籍。トレードマークは帽子からはみ出る位の長髪。因みに球界でいち早くテクノカットを取り入れた
*22:絶叫?
*23:バッティングフォームに特徴のある選手。ファン感謝デーで阿波野がマネをしていたが結構似ていた。我が実家の近所のスーパーへ、デービスと一緒に買い物に来ていたが何故か裸足だった
*24:元祖・満塁男。終盤はもっぱら代打専門だが往年は小川亨・平野・栗橋らとクリンナップを組む
*25:影の薄い左腕ワンポイント